事業承継

クリニックの事業承継:お医者様の事業承継はなぜ難しいのか

2019.05.15
事業承継

医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」、松浦 薫です。

モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」

院長先生が理想とする、自分らしいクリニックを作って頂くために、頼りになる「伴走者」であることを目指してます。

※ 私のちょっと(かなり!?)変わったプロフィールはこちら(「プロフィール」)。10人中10人の院長先生に面白がっていただいています(涙)。

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お医者様にも「診療科」などの専門領域があるように、税理士にも、それぞれ得意分野・専門領域があります

私の税理士としての専門領域は2つ。プロフィールにも書きましたが、

「医療税務」と「資産税」を専門領域としてお仕事をさせて頂いております。

 

  • 「医療税務」とはその名の通り。クリニック様・医療法人様を中心に顧問として永く関わらせていただいています。
  • 「資産税」とは、相続や譲渡、不動産や医療法人の持ち分を含む非上場株式などを対象とするもの。わかりやすいところでいえば、相続税申告や相続対策。

 

そのため、医療法人の理事長のご相続や、医療法人の事業承継・クリニックの事業承継など、

「医療税務」×「資産税」 という掛け合わせでのご相談・ご依頼を頂くことも多いのですが、

ご相談を承るたびに、

 

お医者様の相続・事業承継は本当に大変だな・・・

 

と、感じます。

お医者様の相続、医療法人の事業承継・クリニックの事業承継がなぜ大変なのか?自分なりに考えてみました。

①:後継者が基本的には
「ドクター」である必要がある

例えば、医療法人の理事長様がお亡くなりになられた場合。

理事長が長く不在の状態を作ることはできないので、次の理事長にご就任頂く必要がでてきます。

その場合、医療法人の理事長は、どうしてもやむを得ない事情がある場合を除き、医師免許を持つドクターである必要があります。

ご子息・ご息女がドクターでいらっしゃって、しかも一緒に医療法人をなさっている(もう理事に就任されている)というケースはまれ。

 

  • ご子息・ご息女にドクターはいらっしゃるが、他で勤務をされている(当然、すぐに理事長に就任はできない)
  • そもそも、後継者となるドクターのご子息・ご息女がいない

 

といったようなケースが多く、突然のご相続などの場合は、早急に解決しなければいけない「後継者問題」に直面してしまうことになります。

一般の会社でも難しい後継者問題。

医療法人様の場合、それに加えて「ドクターである」という難易度の高い要件が加わってくる、というのがさらに状況を難しくします。

 

②:ご相続財産が「事業用資産」・「医療法人の持ち分」などの事業関連が多くなる

そして、ご相続を考えるにあたって、避けて通れない質問。

 

誰に、何を相続させるか (もしくは、誰が、何を相続するのか)?

 

相続税申告をお手伝いする場合には、「遺産分割協議書」の作成、

相続対策をお手伝いする場合には、「遺言書」の作成(遺言書を作らない場合もありますが)

をお手伝いさせて頂くのですが、

医療法人様・クリニックをやっておられる個人開業医の先生のご相続の場合、

ご財産の一程度割合が、「事業用資産」(例えば医療機器やクリニックの建物)や、「医療法人の持ち分」で占められてしまう

というのが、難しいところです。

 

もちろん、「事業用資産」も「医療法人の持ち分」も、

後継者となられるドクターの相続人の方にとっては、今後も診療を続けられるにあたって必要不可欠な資産です。

 

ただ、ドクターではない相続人の方にとっては、必ずしもそうではない、、、というところがあります。

  • 相続財産の大半が事業用資産
  • 事業用資産はドクターであるご子息が相続したが、ドクターではない他のご子息は殆ど相続財産がなかった

というケースでは、相続人の皆様の中でのもめごとが起こりかねません。

(単純に、相続財産が多い・少ない、の問題だけではなく、、、親御さんからの愛情の不公平感、といった感情の問題も出てきます)

 

そのため、医療法人様の事業承継や開業ドクターの先生の相続の場合、

「誰に・何を相続してもらうか」という論点は、特に慎重にご検討いただく必要がある

と思います。

なお、こちらに関連して、個人事業の開業医の先生がお使いいただける「個人版事業承継税制」が創設されました。

国税庁「個人版事業承継税制のあらまし」

法人の事業承継税制は、「医療法人は対象外」(その分、後述の「認定医療法人」などの制度があります)なのですが、

個人版事業承継税制は、開業ドクターもお使いいただける制度です。

こちらについては、また改めて詳細や、お使い頂くにあたって考えるべきこと、など、整理してみたいな、と思います。

 

③:医療法人の「持ち分」の評価額が
高くなるケースが多い

長くやっておられる「持ち分あり」の医療法人様の事業承継を考える場合、もしくは持ち分をお持ちの理事長にご相続が発生した場合、

問題となるのは、「医療法人の持ち分の評価額が高くなってしまう」ことです。

上場株式と異なり、流通性があるわけではありません。にもかかわらず、かなり評価額が高くなってしまい、

結果納税額が高くなってしまう。。。ということに。

また、医療法人は医療法で剰余金の配当が禁じられている医療法第54条)ため、

②でお伝えしたとおり、事業用資産と同様、後継者でない相続人の方にとっては、すすんで相続されたいとは必ずしも思わない、財産でもあります。

ですので、「持ち分対策」は、医療法人様の事業承継を考えるにあたって、避けることのできない論点といえます。

 

そのため、「持ち分対策」の一つとして、

「持ち分あり」医療法人から「持ち分なし」医療法人への移行 をご検討されるケースがあります。

 

持ち分なし医療法人への移行の認定制度(厚生労働省 資料)

 

こちらも別記事で、詳細や留意点などを整理してみたいと思います。

 

④:行政手続きと一体で考えていく必要がある

こちらも、医療法人様特有の論点です。

理事長のご逝去に伴う理事長変更など、定款変更が伴う内容を中心として、

医療法人の事業承継には、都道府県など行政機関への報告や認可申請などが密接にかかわってきます

そのため、単に「相続にかかる相続税を計算する」といった税金を計算する、だけではなく、

どのタイミングで、何を、行政機関に報告・認可申請していく必要があるのか、といった行政手続きも踏まえて

ことを進めていく必要があります。

 

ちなみに、私が税理士として在籍している、TOTALグループには、

行政関連、登記などの頼りになる専門家が在籍していますので、

連携しつつスムーズに進められるのは、本当に大きいな、と思います。

 

 

【ひとりごと】

森アーツでやっている「ムーミン展」、いってきました。

ぼっちゃりほっぺに、くりくりおめめ。

そして、ほっぺ以上にぽっちゃりしたおなかに、ちょんちょん、とくっついた手足。

ムーミンのかわいさは最強です。。。

スナフキンもミィもかわいいけど、やっぱりムーミン♪♪♪

こっち向いて、でもなんでもいいから一家に一人(・・・ん?一頭?一匹?いや、その言い方は夢がない)

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