メリット・デメリット

医療法人の設立には時間がかかる

2018.10.18
メリット・デメリット

※この記事は、「そろそろ医療法人化を検討しようかな、、、」と考えておられる院長先生によんで頂きたい記事です。

「医療法人化」
開業して順調に推移をされていらっしゃる先生にとって、
次に検討されるテーマの一つかと思います。

私自身も、開業時からお付き合いさせて頂いている先生が多いため、
開業後、順調に実績を伸ばして来られている先生には、
「タイミング」をみて、検討をご提案するようにしています。

医療法人化の検討には、この、「タイミング」がとっても大切。

なぜかというと、

「医療法人の検討・設立には、先生が思っておられるよりずっと時間がかかる」

だからです。

通常の会社であれば、「急いで来月には会社を作りたいんです」ということもあるかもしれませんが、医療法人の場合、そうはいきません。

ここでは、医療法人化の検討の「何に」「どれくらい」時間がかかるのか、
具体的にイメージしていただければと思います。

1)医療法人は、設立に都道府県の認可が必要で、認可申請のタイミングは年2回しかない。

医療法人が、一般の会社の設立と大きく違う点として、
「設立に都道府県の認可が必要」という点があります。
そして、
「認可を受けられるタイミングは、年に2回しかない」
「認可を受けるためには、事前に認可申請の締め切りがある」

のです。しかも、
「このタイミングは都道府県によって異なる」
のです。そのため、
まずは、
「申請のスケジュールをあらかじめおさえて、必要なタイミングで準備を始める」

ことが必要になります。

例えば東京都の場合の認可スケジュールは、こちら。
(東京都福祉保健局HPより)

【第1回】
仮受付期間:平成30年8月27日(月曜日)から平成30年8月31日(金曜日)まで(消印有効) ※郵送受付のみ
審議会:平成31年1月下旬~2月初旬
認可書交付:平成31年2月中旬から下旬

【第2回】
仮受付期間:平成31年2月25日(月曜日)から平成31年3月1日(金曜日)まで(消印有効)
※郵送受付のみ
審議会:平成31年7月下旬~8月初旬
認可書交付:平成31年8月中旬から下旬

つまり、今から準備を始めても、東京都で、医療法人を設立できるのは、

・ 最短でも「平成31年8月認可」(→通常ではその後9月に設立)
で、そのためには、
・ 平成31年2月末の「仮申請」に間に合うように準備をする
必要があるのです。
(県によっては、設立講習会への参加が義務となる県もあります)

そのほか、千葉県・埼玉県・神奈川県もそれぞれ認可のスケジュールが各県のホームページに公表されていますので、確認が必要です。

要は、
・ 「設立申請」のタイミング(→そのための「仮申請」のタイミング)を確認し、
・ そのタイミングから逆算して、準備を始める

ことが大事になります。

そのため、私の場合、今の時期ですと、法人化を検討されたほうがよい東京都の先生には、

「来年の2月中に資料を準備していく必要があるので、年内にまた一度詳細をお話しして方向性を決めていきましょう」

とお話しするようにしています。

2)医療法人の準備。「資料の準備」以外で、時間がかかることは?

ということで、スケジュールは押さえたとして、
設立申請に必要な準備を進めていきます。
必要な資料のご準備、もそれなりに時間がかかるのですが、

経験上、「資料を準備する」、以外に、
「実は、これに結構時間がかかるのか、、、」
「実は、ここで止まってしまうのか、、、」
という点がいくつかありますので、記載しておきたいと思います。

① 監事になって頂く方を探す。
医療法人を設立するにあたって、1名以上の監事を設置する必要があります。

監事とは簡単にいうと、「医療法人の業務や財産の状況を監査する」のが主な役割なのですが、その職務の性質上、医療法人からの独立性を担保する必要があるため、下記の要件を満たす必要があります。

・ 医療法人の理事、評議員および法人の職員ではないこと
・ 他の役員と親族等の特殊の関係がないこと
・ 医療法人と取引関係・顧問関係にある個人、法人の従業員ではないこと

つまり、院長先生のご親族や、私のように顧問をさせて頂いている税理士などは
監事に就任できない、のです。

そのため、
「監事になって頂く方を探す」のに、思った以上に時間がかかり(もしくは見つからず)、医療法人の設立を見送られる、というケースも。

② 設立時&設立後にかかるコスト、個人に残る債務が多かった
もう一つ、
「やっぱり法人化は見送ろう」
となる理由として、

・ 設立時&設立後にかかるコストが多かった
・ 個人に残る債務が多かった

というのがあります。
医療法人の設立のメリットとして、「節税メリット」はよく言われるところですが、対して下記の「デメリット」(・・・というより留意点)は、
見落とされがちです。

・ 設立時にかかるコスト
例:消費税課税事業者の先生の場合、固定資産拠出にかかる消費税
・ 設立後にかかるコスト
例:社会保険の負担(法人は社会保険加入が義務となります)
・ 個人に残る債務
例:個人事業で借り入れた借入金が、全額医療法人に引き継げる訳ではありません。個人から法人に承継できるのは、「医療法人に拠出する資産」と対応している「債務」のみとなります。そのため、思った以上に 「個人でそのまま返済する借入金」が多く残ってしまう ことも。

もし、この辺りを検討せずに進めてしまうと、医療法人設立申請の直前になって、

「・ ・ ・え、そうなの?」
ということにならないとも限りません。

そのため、医療法人設立のご相談が始まった場合、なるべく早いタイミングで、
このあたりの留意点をお伝えし、試算するようにしています。

③医療法人のお名前、設立趣意書
あとは、医療法人のお名前。こちらは時間をかけたからどうなるものではないのですが、せっかく設立されるのですから、、、院長先生が「納得される」お名前を見つけていただきたいところです。そうすると、意外に皆様「時間がかかる」と思われるようです。
(私も、自分の会社の名前を考えるのに、、、苦労しました。これはまた別の記事で。)
合わせて、「設立趣意書」も。先生が

などなど。

ということで、医療法人の設立準備、
・ 思った以上に時間もかかりますし、
・ いろんな「医療法人ならでは」の留意点があります。

ざっくりいいますと、
・ 医療法人化するかどうかの判断:数ヶ月
・ 資料をご準備頂く:1ヶ月?数ヶ月
・ 仮申請?本申請、認可:約半年
・ 設立登記:1ヶ月(→その後、保険診療開始)

といったスケジュールになるので、

私の目安では、
「そろそろ来年の今頃は法人で診療していただいてもよいのでは?」
と思うタイミングで、こちらから少しずつお話をする
(=1年くらいのリードタイムを見る)ようにしています。

院長先生にとって、一生に一度(※普通は)の医療法人設立。
どうぞ、スムーズに設立まで進まれますように。

もし、お悩みございましたら、セカンドオピニオンも承ります。
遠慮なくお問い合わせください。