相続

遺言:民法改正ー「自筆証書遺言」でよく頂くご質問

2019.08.10
相続

医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」、松浦 薫です。

モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」

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前回の投稿(遺言の作成や遺言執行者をご依頼いただいて、思うこと。)に引き続き、遺言について。

ご存知の先生もいらっしゃるかもしれませんが、

今回、40年ぶりの民法改正に伴い、

「自筆証書遺言の方式緩和」「自筆証書遺言の保管制度」といったトピックが出てきました。

 

遺言をご依頼頂く際に、ご自身で色々とお調べて頂いているお客様から、

自筆証書遺言が作りやすくなったんですよね~

と、よくご質問を頂きます。

 

その中で、誤まって理解されやすいと思われる項目がありますので、下記にまとめておきたいと思います。

①自筆証書遺言って、
パソコンで作れるようになったんですよね?

自筆証書遺言の方式緩和」ということで、

これまでは、自筆で遺言書を作成する(自筆証書遺言)の場合、遺言の全文を自書で作成する必要がありました。

ひとことで「自書で作成」というのは簡単ですが、これが実はとっても大変。

 

特に、財産が多数あられる場合など、「財産目録」というご財産の一覧表のようなものも、全て、自分で手書きで作成する必要がありました。

 

例えば、想像してみてください。

最近は、お手紙を書くことはあんまりないかもしれませんが、

何ページにもわたるお手紙を、間違いなく書くのって、ちょっと、いや、とっても大変ですよね。

 

ということで、自筆で遺言を残したい、という方には、全文自書である必要がある、ということが相当な負担だったのですが、

 

今回の改正で、一部は自書でなくてよい、ということになりました。

具体的には、

  • パソコン等で作成した財産目録
  • 銀行通帳のコピーや、不動産の登記事項証明書 等を目録として添付

することができるようになりました。

 

で、ここで誤解をされている方がいらっしゃるのですが、

これは、あくまで、財産目録や添付資料が手書きでなくてもよくなった、ということで、

全文をパソコンで作成できるようになったわけではないので、ご注意ください。

 

民法の条文でいいますと、

 

民法 第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

こちらには変更はなく、

その2項として、

自筆によらない財産目録を添付してもいいよ~

という内容が追加になった、というたてつけです。

 

なお、こちらは平成31年1月13日に施行、

同日以降に作成される自筆証書遺言については、この新しい方式に従って遺言書を作成することができるようになります。

② 遺言を法務局に預ければ、
もう心配ないですよね?

まだ施行前ですが、今回の改正で、

自筆証書遺言も、法務局に預けることができるようになります。

出所:法務省:法務局における遺言書の保管等に関する法律について

 

で、この法務局での遺言保管について、

公的機関に保管してもらうのだから、もう大丈夫

と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、、、ご注意ください。

 

何かというと、

この保管制度ですが、遺言を作った方お亡くなりになった場合に、

相続人の一人から遺言書の写しの交付・閲覧請求があって、はじめて開封がされるものです。

 

つまり、

遺言を作って、法務局に預けているよ

ということを、相続人の方が知らない場合は、せっかく作った遺言が見つけられないまま、ということにもなりかねませんのでご注意ください。

 

なお、こちらはまだ施行前です。施行日は令和2年7月10日となります。

 

ということで、今回の民法改正で、自筆証書遺言が作りやすくなっていますが、

個人的には、保管制度の施行前の現時点では、公証役場で公証人の方に作成いただく公正証書遺言をおすすめしています。

 

【ひとりごと】

サントリー美術館「遊びの系譜展」。

江戸時代を中心に、すごろく・かるた・踊り、、、などなどの遊びを題材にした遊楽図がたくさん。

遊びを~せんとは~うまれ~けむ~。大河ドラマ「平清盛」、すごい好きでした。

 

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