税金

ドクターの離婚:財産分与にかかる税金は?

2019.02.03
税金

今回はあまりクリニックとは関係のないお話。

あまり、いいお話ではないのですが、たまに開業ドクターの先生がたからご相談を頂き、普通にお答えすると、

 

え!そうなんですか?

 

とびっくりされることが多いので、、、。なにかというと、

 

夫(妻)と離婚して、「財産分与」で財産をもらった(あげた)んですが、税金はかかるのか?

 

というご相談です。

 

①離婚による「財産分与」は「贈与」とは違う

まずそもそも、「財産分与」とはそもそも何なのでしょうか。

民法で定められているお話で税理士の私には専門外なので、シンプルにお伝えすると、

 

夫婦が離婚したときに、相手方の請求に基づき、もう一方が相手方に財産を渡すこと

 

を言います。もう少し詳細にいうと、

 

財産関係の清算や離婚後の生活保障のための「財産分与請求権」に基づき財産の給付を受けること

 

つまり、

 

結婚している間に二人で協力して蓄積してきた財産を清算しましょう

 

離婚した後の生活保障のための扶養料や慰謝料を請求する権利があるので、財産を給付してください

 

ということなんですね。

 

そのため、ここが誤解されがちなのですが、

離婚による「財産分与」は、「贈与」ではないため、財産をもらった(あげた)としても、通常は財産をもらったほうには贈与税がかかりません。

無償で財産をもらったわけではなく、

「財産の清算」や「財産請求権に基づく給付だから」というのがポイントです。

 

② 実は、財産をあげたほうに税金がかかる

じゃあ、税金は全く心配しなくていいのか、というと、そうではありません。

 

実は、財産分与に関しては、

財産をあげたほうに、譲渡所得税がかかる

のですね。

 

所得税法の「譲渡」は

有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為をいい、

その中には通常の売買のほか交換、競売、代物弁済、財産分与なども含まれる

(参考:国税庁HP「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」

 

からです。

 

例えば具体例でいうと、

 

【具体例】

  •  夫から妻へ「財産分与」により、夫婦が居住していたマンションを渡した
  •  マンションの取得価額は5000万円(減価償却を考慮後)、時価は7000万円

 

の場合、どのような税金になるかというと、

 

妻:①で記載したとおり、「財産分与」は「贈与」ではないので、贈与税はかかりません。

夫:財産を「譲渡」したことになりますので、他の所得と一緒に「確定申告」で譲渡所得税の申告をしていただく必要があります。

 

その場合は、いくらで譲渡したことになるかというと、

財産分与時の時価=収入

となりますので、他の要素を省略してシンプルにいうと、

時価7000万円 - 取得価額(減価償却考慮後)5000万円 = 2000万円

が、譲渡所得となります。

 

え、財産渡した上に、ものすごい税金がかかるの、、、

 

と思われるかもしれませんが、実はもう一つ考慮する要素があります。

 

居住用財産の譲渡の場合は、要件を満たしていれば、

「居住用財産の譲渡所得の特別控除」(譲渡所得3000万円までは譲渡所得税がかからない)などの特例を受けることができますので、

 

財産を渡すほうにも税金がかからないケースも多いかと思います。(もちろん、確定申告は必要です!)

③財産をもらったほうに税金がかかることも

ということで、離婚による財産分与の場合、

財産をもらったほうには「贈与税」はかからず財産をあげたほうに「譲渡所得税」がかかる

のが一般的なのですが、

場合によっては、財産をもらったほうに贈与税がかかってしまうので注意が必要です。

(以下、国税庁HPより。次のいずれかに当てはまる場合贈与税がかかります)

  • 1 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合
  • 2 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合

 

最近の国税不服審判所の裁決事例(平成30年1月11日裁決)でも、

財産分与された財産が「不相当に過大ではないか」が論点となり、納税者と処分庁が争った事例があります。

  • 税金を滞納していた納税者が財産分与で妻に財産を渡したところ、
  • 処分庁が「無償による譲渡」であるとして、その妻に第二次納税義務の納付告知処分を行った
  • (つまり、税金を滞納している夫にかわり、無償で財産を受け取った妻に税金を払いなさい、といってきた)

 

裁決では、「不相当に過大ではない」と判断をされ、

無償による資産の譲渡ではなく、財産分与という判断となり、妻は第二次納税義務を免れたのですが、

 

その際の「財産分与」にあたるかどうか(不相当に過大であるか否か)の判断基準については、

 

  • 財産の額や婚姻期間中の状況等の諸事情を考慮して、
  • 清算的要素、扶養的要素および慰謝料的要素に相当する額をそれぞれ算定したうえで判断するのが相当

 

とのことでした。

ご夫婦の個別の事情を考慮しながら、適当な財産分与の金額を決めて、余計な税金を払わないようにする

とことが大事、ということですね。

 

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