税金

開業ドクター、医療法人理事の「副業」にかかる税金は?②

2018.10.23
税金

前回の記事の最後に記載した、

会社の役員のかたが、ライブハウスなどでの歌唱やCDを収録して販売していた所得事業所得として申告したところ、雑所得と判断され、過少申告加算税を課されてしまいました。
国税不服審判所で審査を請求しましたが、審査請求は棄却。
つまり、「事業所得」ではなく、「雑所得」と判断されてしまった例です。

「事業所得」なのか「雑所得」なのか。どういう事実を元にどう判断されるのか。
実際の裁決を元に見てみたいと思います。

【平成29年10月6日 国税不服審判所 裁決】
(所得区分と損益通算/会社役員の歌唱活動等により生じた損失)
請求人のライブハウスなどでの歌唱等による所得は事業所得に該当するということはできず、雑所得に該当するから給与所得等との損益通算はできないとした事例

内容をかいつまんで記載すると:
・ 会社の役員(法人から役員報酬を得ている)が、下記の歌唱活動の所得を「事業所得」として申告
– ライブハウスなどでの歌唱活動(1年に、18回から43回程度)
– CDを収録したCDの販売
・ 申告にあたっては、事業所得は損失が出たため、給与所得と損益通算。事業からでた損失を給与所得の金額から控除した。
・ その申告に対して、原処分庁(税務署のことです)は、上記の所得は「事業所得」ではなくて「雑所得」であるとし(=給与所得と損益通算することができない)、更正処分を行った。
・ 会社の役員が、この更正処分を不服として、国税不服審判所で処分取り消しの請求を行ったが、不服審判所は、「雑所得」と判断し、審査請求を棄却。

という事例です。

で、この「雑所得」と判断した理由を見ると、逆に「事業所得」かどうか、の判断をどういう事実をもとにどう判断していくのか、が理解できるなーと思いました

そもそも事業所得とは:
– 自己の計算と危険性において独立して営まれ、
– 営利性、有償性を有し、
– 反復継続して遂行する意思(反復継続性)と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得

なのですが、

→この点については、審判所は
「営利性、有償性、反復継続性」はいずれも有している
と認めるものの、下記の内容により、「事業所得」とは認められない
という判断でした。

① 継続して安定した収入を得られる可能性が低い

②自己の危険と計算においてする企画遂行性を有していない
(この場合、音楽関係者との交流やスポンサー探しなどを自らは行っておらず、歌唱活動も「誘いに応じて」だったこと、歌唱活動のスケジュールが記載されたブログも更新されていなかった、ことなどをさすようです)

③ 精神的および肉体的労力の程度が限定的
(年間のライブ活動が、年18回、年43回、年43回)

④ 人的設備を有していない
(自宅で電子ピアノやスピーカーを所有し、歌唱活動のスケジュールを自分で行っていた)

⑤ 給与収入等で生活の糧とするとともに、歌唱活動の資金として使っており、社会的地位が確立されていたとはいえない

個人的には 、
①歌手って、、、安定した収入を継続的に得られる状態になる方が難しいのでは
とは思いましたが、後の事実認定については、仕方ないところかもしれませんね。

”「会社の役員が空いた時間に、趣味のライブ活動をやっている」のと何が違うの?“

という質問に、私が税理士として、くりっとこたえられるかどうか。。。

あとはやはり、前提として、「損益通算」が厳しかった、というところかも。

医療法人の理事さま、開業されているドクター、プロフェッショナルだけどいくつか収入源を持っている方、いろんな方に参考になりそうな事例、ですね。

ちょっと、繰り返し、というか、まとめっぽくなりますが、
事業所得のチェックリスト。

  • 自己の計算と危険性において独立して営まれているか(企画遂行性)
  • 営利性、有償性、反復継続して遂行する意思(反復継続性)があるか
  • 社会的地位が客観的に認められるか
  • 継続して安定した収入を得られる可能性が高いか
  • 精神的および肉体的労力の程度は
  • 人的設備を有しているか

・ ・ ・といったところでしょうか。

基本はチェックリストで抑えつつ、ケースバイケースで最適判断を。

そこがこのお仕事のやりがいのあるところ、だったりするのです。

 

副業に関連して、院長先生から不動産投資のご相談を頂くこともあります。

よく頂くご質問の「事業的規模」について、整理してみました。

院長先生の不動産投資①:「事業的規模」って何?

院長先生の不動産投資②:「事業的規模」のメリットと留意点

 

(雑感)
10月も下旬。だいぶ秋めいてきました。
今年こそは「食欲の秋!」を少しだけ抑えて、冬を迎えたいところです。
「スポーツの秋」、「読書の秋」、「芸術の秋」・・・って、なんで秋って、
テーマがつくのでしょうか^^?