医療・クリニックに強い税理士松浦薫のブログ
今回は、「電子帳簿保存法」の改正について。
じみ~に(・・・でもなく)、いろんな影響がある内容。
来年1月からのご対応が必要ですが、そのためには、いくつか準備が必要となりますので、
私もお客様に順次ご案内し、対応をご相談しているところです。
そもそも何の話?何をすべき?・・・といった基本的なところをまとめておこうと思います。
※ 2021年10月時点の情報に基づき書いております。また概要のみの記載となります。
今回、大きく、①「電子帳簿の保存」・②紙の書類をスキャンして保存する「スキャナ保存」・③「電子取引」の3つの側面から改正が入りました。
①「電子帳簿の保存」・②「スキャナ保存」については、基本的には要件が緩和となります。できるだけ電子で保存していってね~、ということですね。
改正ポイントの中で主なもののみピックアップします。
・・・と、ここまでは、緩和なのですが、今回重要なのは、3つめ、③「電子取引」についてです。
①「電子帳簿」・②「スキャナ保存」についても、生産性向上の観点から、もちろん将来的には検討が必要にはなってくると思うのですが、
基本的には、これまで紙で保存していた場合は、いくつか対応したうえで、まずはいったんそのまま紙保存で進られると考えてよいと思います。
ただし、③電子取引については、「これまで認められていたものが認められなくなる」ものなので、優先的に対応が必要となってきます。
では、そもそもですが、対応が必要な「電子取引」とは何かを見ていきたいと思います。
上記のご説明で「・・・ん?意外にたくさんありそうでは?」と思われた方、そのとおりです。具体例としては、下記のようなものがあります。
・・・と、結構、思い当たるものが多いのではないでしょうか。
このような取引で受領したものを「印刷して紙で保存」すると、2022年1月以後の取引については、国税関係の書類としては認められなくなるので、
紙ではなく、電子データにて保存する必要がでてきます。
では、具体的にはどのように保存すればよいのでしょうか。
こちらは、この7月に発表された、国税庁の「一問一答」に具体的な保存方法が記載されています。
(※特に、利用頻度の多そうなものは太字下線)
① 電子メールに請求書等が添付された場合
→ 請求書等が添付された電子メールそのものをサーバ等自社システムに保存
→ 添付された請求書等をサーバ等に保存
② 発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合
→ ウェブサイトに領収書等を保存
→ ウェブサイトから領収書等をダウンロードしてサーバ等に保存
→ ウェブサイト上に領収書を保存
→ ウェブサイト上に表示される領収書をスクリーンショットし,サーバ等に保存
→ ウェブサイト上に表示されたHTMLデータを領収書の形式に変換(PDF等) し,サーバ等に保存
③ 第三者等が管理するクラウドサービスを利用し領収書等を授受する場合
→ クラウドサービスに領収書等を保存
→ クラウドサービスから領収書等をダウンロードして,サーバ等に保存
④ 従業員がスマートフォン等のアプリを利用して,経費を立て替えた場合
→ 従業員のスマートフォン等に表示される領収書データを電子メールにより送信さ せて,自社システムに保存する。
→ スクリーンショットによる領収書の画像データでも可。
下記のいずれかの要件を満たす必要があります。
また、事後的な確認のために、検索できるような状態で保存する、ディスプレイ等の備え付け等も必要となります。
このタイミングで、要件の1.~3.を満たすタイムスタンプや保存システムの導入を検討されるのもよいですし、
まずは、4.の事務規程(規程のひな形が国税庁から発表されています)の策定で対応されても思います。
ただ、保存要件を満たさない場合、取引情報のデータの保存がなかったものとして、
青色申告の承認の取り消しの対象にもなり得ますので、確実に対応いただくことが必要です。
→11月15日追記:国税庁より、11月12日に追加情報が発表されました(国税庁:お問い合わせの多いご質問 令和3年11月)。
—————————————————————————————————————————-
補4 一問一答【電子取引関係】問 42(一部抜粋)
その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。
—————————————————————————————————————————-
つまり、電子取引を電子ではなく書面で保存してしまっていた、という事実だけで、すぐ青色承認の取り消しになることはない ということになります。
いずれにしても、まずやるべきことは、
今の業務プロセスで電子取引に該当するものが何なのか?のリストアップ
だと思います。
3.でみていただいたとおり、「今まで紙で印刷していたのだけど、これからは電子で保存」というもの、結構あると思います。
また、スタッフさんの経費精算等については、経費精算の方法や資料提出などにも変更が必要となってくる可能性があります。
まずは、その取引を見える化したうえで、対応するアプローチを検討いただくのがよいかもしれませんね。
・・・ということで、お客様には、「電子取引」チェックリストをお渡しし、ご一緒に確認しつつ、1月の改正に向けたご相談を始めています。
まずは、「電子取引」を優先的に対応していきますが、全体的な電子保存への対応で、お客様の業務効率化が進んでくるとよいな、と思います。
近い将来にくるインボイス制度との関連も気になりますし。。
→12月6日追記:日経新聞 朝刊 電子保存義務化 2年猶予 結局、義務化は2年の猶予を設けられることになりそうです。朝令暮改ですが、やっぱり、インボイス制度や電子帳簿保存の全体像からの論点整理、必要ですよね笑。
【ひとりごと】
新宿御苑の紅葉。少しずつ色づいてきました^^。
11月には、恒例の菊の花壇展もはじまります。すっかり秋・・・を感じます。
今回は、新型コロナワクチン接種を行った場合の消費税について。 ワクチンの個別接種に手を挙げようと思うのだけど? とのご相談が増え始めたのは初夏の頃。
確定申告でよくご質問をいただく項目のひとつに、「医療費控除」があります。 その年の1月1日から12月31日までの間に ご本人又はご本人と生計を一にする配偶者のかたや
早いもので2021年も1か月が過ぎました。 2月も始まり、2020年の確定申告のシーズンが近づいてきました。 今回は、所得税の控除関係(基礎控除、給与所得控除など)で2020年から改正が入
医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」、松浦 薫です。 モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」。 ※ 私のちょっと(