医療・クリニックに強い税理士松浦薫のブログ
「パートスタッフさんから『扶養の範囲内で』と言われたけど、どうしたらいいの?」
年末近くになってくると、院長先生や事務長から、よく頂くご質問。
ときには、スタッフの方から直接「扶養、超えたくないんですけど」といったご質問を頂くことも。
年末の忙しい時期に、「シフトが入らない」など困った事態にならないように、早め早めにスタッフさんとご相談頂き、調整が必要です。
でも、この、『扶養の範囲内で』という言葉。実は、色んな(大きくは2つ)意味を含んでいるので、誤解のないように注意が必要。
しかも、今年平成30年から、税制の改正が入った関係で、さらにいくつか注意点があります。
これから年末に向けて、また院長先生のところにスタッフさんからの
「扶養の範囲を超えたくなくて、、、」というご相談が増えてくると思います。
情報の整理として、
・ 「扶養の範囲内」ってそもそもどういうことで、
・ 「超えたらどうなってしまうのか」、などをまとめておこうと思います。
1)そもそも「扶養の範囲」とはどういう意味なのか?
「扶養の範囲で」と言われた場合、多くの場合、まずは下記の言葉に読み替えて頂くとよいと思います。
「扶養の範囲内で働きたい」
=①「所得税の『配偶者控除』を受けられる範囲内に年収を抑えたい」 もしくは、
=②「社会保険の『扶養』に入る範囲内に年収を抑えたい」
それぞれどういう意味なのでしょうか。
2)「所得税の『配偶者控除』とは?受けられる範囲内、とは?
まず、①所得税の場合は、「『扶養』の範囲内で」といいながら、多くの場合は、「所得税の『配偶者控除』・『配偶者特別控除』」を念頭におかれているケースが多いと思います。
※ ここでは、話をわかりやすくするために、『配偶者控除』・『配偶者特別控除』の2つを合わせて、『配偶者控除等』と記載します。
※ また、こちらも話をわかりやすくするために、多くにあてはまるケース(奥様がクリニックのスタッフ、そのご主人がサラリーマン)を例にして書いていきます。
所得税の『配偶者控除等』とは、簡単にいうと、
・ ご本人の年収が150万円以下(注:給与収入のみの場合)なら、配偶者の所得税抑える(所得を38万円控除する)ことができる
という制度です(しつこいですが、わかりやすくするために相当、話をはしょっています)。つまり、院長先生のクリニックだけで働かれているスタッフの方であれば、
「クリニックからの給与を年間150万円以内にする」ことで、「ご主人」にかかる所得税を抑える(所得を38万円控除する)ことができる
ということになります。
この、150万円以内 という数字が、昨年までは103万円以内でした。ニュースでも「103万円の壁から150万円の壁へ」と放映されることも多かったので、スタッフさんの中でも「150万円の壁」という数字が記憶にある方も多いようです。
ただし、1点注意点。こちらの「配偶者控除」「配偶者特別控除」ですが、今回の改正で「ご主人」の所得制限が厳しくなっています。
具体的には、ご主人の所得が900万円(給与収入になおすと1,120万円)を超えると控除額が減額となり、1,000万円(給与収入になおすと1,220万円)を超えると控除が受けられなくなります。
つまり、ご主人の給与収入が1,220万円を超える場合には、パートタイム収入がいくらであっても配偶者控除等の適用は受けることができませんので、ご注意ください。
3)②「社会保険の『扶養』に入る範囲内に年収を抑えたい」とは?
ここまで①所得税の『扶養の範囲内』の話をしてきましたが、スタッフの方のお話をお聞きしていると、実は「『扶養の範囲内で』働きたい」といった場合には、この「150万円の壁」ではなく、今からお話する
②「社会保険の『扶養』に入る範囲内」
のことを指しているケースが多いです。いわゆる「130万円の壁」です。
「社会保険の『扶養』」とは、簡単にいいますと、
「自分は健康保険料を払うことなく、ご主人の加入している健康保険の保険証を使えること」をいいます。(こちらもあえて極力シンプルにしています)。
この扶養の収入基準額は年間130万円未満(60歳以上のスタッフなら180万円未満)です。つまり、こちらも院長先生のクリニックのみで働いているスタッフの方であれば、
「クリニックからの給与を年間130万円未満以内にする」ことで、自分は健康保険を払わないで済む」
逆にいうと、
「クリニックからの給与が年間130万円以上となると、スタッフさんが自分で健康保険を払わなければならなくなる」
ということです。
この②社会保険の扶養「130万円の壁」は、①所得税の「150万円の壁」よりも金額が低く、かつ、超えた場合にスタッフさんご本人の支出が直接増えてしまう、ということもあり、スタッフさんとしては、何がなんでも「給与収入130万円」を超えないようにしたい、ところなのです。
私も、普段ご相談をいただく場合、詳しくお聞きすると、実はこの社会保険の話だった、というケースが多いです。
4)「『扶養』の範囲内で」と言われたら、どうしたらよいか?
ということで、「扶養の範囲内で」と言われたら、少なくとも以下のご質問をしていただくといいのかな、と思います。
「それって、所得税の150万円?それとも社会保険の130万円?」
そもそもの金額が違っていたら、
残りの期間での給与金額を検討されるにあたって、そもそもの金額が違っていたら、、、意味ないですよね。
それにしても、「130万円の壁」って、結構あっという間にきてしまうんですよね。
ですので、
クリニックとして、少し費用をかけてでも「130万円の壁」は敢えて超えてもらう
という選択肢もあります。
これはまた、改めて。
医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」、松浦 薫です。 モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」。 ※ 私のちょっと(
医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」の松浦 薫です。 モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」。 院長先生が理想とする、自分らしいクリニ
医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」の松浦 薫です。 モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」。 院長先生が理想とする、自分らしいクリニ
医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」、松浦 薫です。 モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」。 院長先生が理想とする、自分らしいクリニ