人事・労務

クリニックの「有給休暇取得の義務化」①:上手く実現するためのポイントは?

2019.03.24
人事・労務

医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」、松浦 薫です。

モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」

院長先生が理想とする、自分らしいクリニックを作って頂くために、頼りになる「伴走者」であることを目指してます。

 

※ 私のちょっと(かなり!?)変わったプロフィールはこちら。

消費財のマーケティングボストンコンサルティンググループ(BCG)でコンサルタントやっとこさ天職見つけて今は税理士・・・

紆余曲折っぷりが、10人中10人の院長先生に面白がっていただいています(笑)。

Profile vol.1 キャリア前半~戦略コンサル(BCG)など。

Profile vol.2 キャリアつづき。なんで税理士。

 

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この4月1日から施行される「働き方改革関連法」

その中でも、先生方にご相談いただくことが多いのが、

 

「年次有給休暇取得」の義務化

 

です。

 

既にご存知の先生方も多いと思いますが、内容としては、

 

年次の有給休暇が10日以上付与されている労働者(つまり、クリニックの職員)に対して、

有給休暇を年5日以上を取得させなければならない

 

というものです。

なお、この労働者には、正社員の方だけではなく、有給休暇が10日以上付与されているのであればパートさんも含まれます。

法定の有給休暇付与日数であれば、

「週4日のパートさんが3.5年働いた」場合に、「有給休暇が10日付与」される形になります。

 

職員の方に有給をとってもらうことも、雇用しているクリニックの義務となる・・・

ということで、「有休はあるけど取得してないです」という従業員の方が多いクリニック様には、

頭の痛い制度かもしれません。

(ちなみに、罰則規定、、、です。)

 

また、昨今、クリニックでは、看護師、受付事務など職種に関わらず採用に苦労されるケースが多く、

パートさん中心で回される場合も多々あります。

 

ただでさえシフトを組むのに苦労しているのに、有給休暇の取得義務とは、、、

 

と頭を悩ませておられる先生方も多いのではないでしょうか。

 

私は税理士なので、「人事労務」は専門外ではありますが、

もし私が経営者(もしくは使用者)の立場であれば、これは使うだろうなーと思う取り組みがあるので、

記載しておきたいと思います。それは、

 

「有休の計画的付与」

 

です。何かというと、

 

クリニックが前もって、計画的に休暇取得日を割り振り、有休休暇日を指定する制度

 

になります。

 

この制度の何がいいかというと、2つありまして、(コンサルっぽく「3つ」といいたいところですが、まあ。)

 

① クリニック運営にあたって、「読めない」要素を少しでも減らすことができる

休暇取得日をクリニックが指定するため、

クリニックとしては、

「ここを休まれたら困るのに」「ここで休んでほしいのに」

といった調整の負担を減らすことができます。

(つまり、クリニック運営にあたっての、「読めない」要素 を少しでも減らすことができる、ということです)

 

② 従業員の方も、「有休をとりづらい」と思わず休暇が取得できる

従業員の皆さんにとっても、これまでなかなか「有休がとれない」状況だったのに、

法律で義務化になったところで、「じゃあ、とります」とはなかなかいかないところもあると思います。

そういった場合、クリニック側から指定されることで、「有休をとりづらい」と思われることなく、休暇が取得できる

ということで、従業員さんにとってもメリットがある、と言えるのではないでしょうか。

 

ということで、この制度、上手く使えば、労使双方にメリットがあるのかな、と思います。

 

この「計画的付与制度」で取得した年次有給休暇は、もちろん取得義務化された5日にカウントされますので、

「有休取得の義務化、っていわれてもどうやって実現したら、、、」

と思われている先生は、ご検討いただいてもよいかもしれません。

 

なお、いうまでもありませんが、全ての有給休暇を「計画的付与」で指定することはできません。

(少なくとも5日は従業員の方の自由な取得を保障する必要があります)

 

また、導入にあたっては、いくつかの手続きが必要になりますので、下記に記載しておきたいと思います。

(出所:厚生労働省HP

① 就業規則による規定

計画的付与の導入にあたって、就業規則に、導入することを規定していただく必要があります。

就業規則は、本来は職員10人以上のクリニック様が必須なのですが、

今は開業時から定めておられるクリニック様も多いと思います。

そちらに、

「労働者代表との間に協定を締結したと きは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させることとする」

といった内容を定めて頂くことが必要となります。

② 労使協定の締結

実際に計画的付与を行う場合には、クリニック従業員の過半数を代表する者との間で、

下記の項目を定めた書面による労使協定を締結する必要があります。

(この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。)

 

  1. 計画的付与の対象者:
    育休や産休などで計画的付与の時期に休業に入ることが分かっている方は対象からはずしておく。
  2. 対象となる年次有給休暇の日数:
    少なくとも5日は従業員の自由な取得を保障するように日数を指定する必要があります。
  3. 計画的付与の具体的な方法:
    クリニック全体の一斉付与の場合は、具体的な年次有給休暇の付与日を、
    個人別に付与する場合は、計画表作成時期・手続きなどを記載します。
  4. 年次有給休暇の付与日数が少ない者の扱い:
    クリニック全体の一斉付与の場合は、新規採用者などで5日を超える年次有給休暇 がない人に対しても、
    次のいずれかの対応が必要です。
    ・ 一斉の休業日について、有給の特別休暇とする。
    ・ 一斉の休業日について、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う。
  5. 計画付与日の変更:
    あらかじめ計画的付与日を変更することが予想される場合には、その変更する際の手続きを定めておきます。

 

経営者のお立場としては、

経費面も含めて、少しご苦労も増えてしまう側面もあるかもしれませんが、

義務化された制度を上手く活用し、

従業員の方のやる気アップ、ひいては、クリニック全体にいい影響が出るような形で

進めていただきたいな、と思います。

 

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※ 税務顧問は、私が税理士として在籍する税理士法人TOTALにて承らせていただきます。

 

【ひとりごと】

ある日の朝ごはん。特製テリヤキチキンサンド。

じゅぅしぃチキン&サクサクトーストがたまらない。

ちなみに、この日のランチはビーフってしまいました。肉食ばんざい。