税金・節税

クリニックの経費:車の経費はどこまでいれられるのか?(その②)

2019.04.14
税金・節税

医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」の松浦 薫です。

モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」

院長先生が理想とする、自分らしいクリニックを作って頂くために、頼りになる「伴走者」であることを目指してます。

※ 詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

 

前回の続き。

 

勤務ドクターの先生が、副業のコンサルタントの事業経費に、ジャガーの費用を入れた、結果は?

開業ドクターの先生が、クリニックの経費に、運転免許の更新料を入れた、結果は?

 

開業を控えた先生や、開業された先生からよく頂くご質問に、

 

車の経費ってどこまでクリニックでつけられるの?

 

というご質問があります。

 

お答えは、ざっくり申し上げると、

 

クリニックに関連して使われた分をクリニックの経費に計上します。

 

ということなのですが、

 

(背景にある、税法的な考え方は、前回の記事をご覧ください)

 

それだけではご説明にならないので、

最近、納税者であるドクターの方と、税務署が「車の経費」について争った事例をもとに、

ポイントを見ていきたいと思います。

 

その①:使用日数などの「実態に応じた」使用割合になっているか?

一つ目の裁決事例は、

 

  • 副業として「医療コンサルタント」をしている勤務ドクターが、
  • 「医療コンサルタント」の事業所得の経費として、車(ジャガー)の減価償却費を、事業使用割合70%で計上したところ、
  • 税務署から使用割合が高すぎる、ということで、使用割合31.75%とする「更正処分」を受けた

 

というものです。

 

まず、70%、、、が高すぎる、、、というのはお分かりいただけるのではないでしょうか。

仮に、使用日数按分で考えると、週5日は「医療コンサルタント」として活動していることが前提となります。

もはやドクターではなくて、コンサルタントです笑。

 

ということで、税務署は、使用割合31.75%にしなさい、という「更正処分」を行っているのですが、

更に争った結果、審判所の出してきた使用割合は、さらに厳しいものになってしまっています。

 

・・・なんと、使用割合9.02%。税務署の割合の三分の一。。。

 

審判所の計算根拠としては

  • 分母を1年366日、
  • 分子は、なんと「医療コンサルタント業務のみの日」

として計算しています。

 

つまり、「医療コンサルタント」と「勤務ドクター」の両方に使っている日は、

「区分ができない」として計算に含めないという判断になってしまっています。

 

 

この事例からみえるポイントは、

2つ。

 

  1. 税務署も審判所も、日数などの、使用の「実態」に応じた割合を算出しようとしていること
  2. 使用割合が「区分できない」ものは、計算に含めないという(原則通りの)判断をしていること

 

です。

ので、とてもシンプルな原則になりますが、

 

一程度、事業経費として計上していくためには、

事業に使った分があとでわかるように、しっかりと記録を残しておく、ということが大事

 

かな、と思います。

 

ただ、タクシー会社のように「運行記録」をつけるのか、と言われると、それもまた難しいところですね。。。

 

その② 事業に「直接関連」がある、
と言える経費かどうか?

 

次の事例は、

 

  • 診療所を営む開業ドクターが、
  • お車を「往診や見取りに使っている」として、ご自身の運転免許の更新料を必要経費に入れた
  • 税務署から経費にならないとして否認された

 

という例になります。

・・・これは、さすがに・・・。

審判所の判断も、常識というか、「家事費」という判断。

  • 運転免許の更新料は、請求人自身の免許証の更新のために支出された費用
  • 自動車の運転は一般的に日常生活でも行われるものであり、家事にあたる

 

・・・それはおっしゃるとおり

 

とのコメントですね。

 

これは、前回のブログでも書きましたが、

必要経費の原則的な考え方、「直接要した費用ですか?」という判断基準に照らして考えると答えが出てくる話かと思います。

 

その①:所得税法第三十七条 (必要経費)

第三十七条 ・・・(略)・・・、必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用・・・の額とする。

 

ということで、前回にも書きましたが、再掲させて頂くと、

先生がたが、クリニックの経費を計上するにあたって、お考えいただくポイントは3つ。

 

  1. その費用は、先生のクリニックのご収入を得るために使われた直接的に関連のある費用ですか?
  2. その費用は、事業とは関連のない個人的な出費ではありませんか?
  3. 1.(先生のクリニックのため)と2.(個人的な出費)の両方が含まれている場合、
    先生のクリニックに関連する部分を、明らかに区分することができますか?

 

・・・元コンサルとしては、やっぱり「ポイントは3つ」で終わらないとすっきりしないのでした笑。

 

【ひとりごと】

自宅のお仕事セット。

使わないものを処分してたら、結構シンプルになりました。

Surface(※外出時はiPad派です)とこの子たちがいれば、十分!・・・といいたいところだけど。

税法の専門書は分厚い紙が多く、、、なかなか全スマート化!とはいかないのがつらいところです。