税金・節税

クリニックの設備投資減税①:医療機器や電子カルテを買ったときには?

2019.06.02
税金・節税

医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」、松浦 薫です。

モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」

 

※ 私のちょっと(かなり!?)変わったプロフィールはこちら。

消費財のマーケティングボストンコンサルティンググループ(BCG)でコンサルタント天職見つけて今は税理士・・・

キャリアのくねくね紆余曲折っぷりを、10人中(ほぼ)10人の院長先生に面白がっていただいています(笑)。

Profile vol.1 キャリア前半~戦略コンサル(BCG)など。

Profile vol.2 キャリアつづき。なんで税理士。

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今回は、クリニックの設備投資減税のお話です。

 

そろそろ電子カルテの買い替えを考えていて・・・

今度エコーを入れようと思うんだけど・・・

 

などなど、

クリニックで新しく医療機器を購入されたり、器具備品を取得されたり、といった場合に使える税制について。

従前よりあったもの・今回の税制改正で追加になったもの、事前に申請がいるもの・いらないもの、など

色々ありまして、結構複雑。

特に、今回の税制改正で、「働き方改革」と関連する設備投資減税策も追加となり、数が増えました。

各税制の詳細な適用要件は、また別記事に記載するとして、まずは簡単に、全体像を整理しておきたいと思います。

クリニック・医療機関で使える
設備投資減税は?

クリニック・医療機関で使える設備投資の税制はこちらです。

大きく、「中小企業庁」が所管しているもの、と「厚生労働省」が所管しているもの、があります。

 

【クリニック・医療機関の設備投資減税 一覧】

<中小企業庁 所管>

① 中小企業投資促進税制(所得税・法人税)

② 中小企業経営強化税制(所得税・法人税)

③ 中小企業等経営強化法による固定資産税の特例(固定資産税)(※平成31年3月末をもって終了)

④ 生産性向上特別措置法による固定資産税の特例(固定資産税)

⑤ 商業・サービス業・農林水産業活性化税制(※ 医業は対象外、介護は対象業種)

<厚生労働省 所管>

⑥ 医療用機器特別償却制度(所得税・法人税)

⑦ 勤務時間短縮用設備に係る特別償却(所得税・法人税)

⑧ 地域医療構想に向けた病床再編等に資する建物等にかかる措置

 

・・・色々あります・・・が、適用要件がそれぞれに異なりますので、

設備投資をすればすべて適用がある、わけではなく、

どの税制が使えるのか?を検討する必要があります。

それぞれの税制の内容・適用要件は?
(あえてシンプルに記載・・・)

ということで、それぞれの税制の内容・適用要件を、各出所とともに、数行程度で、簡単に整理しておきます。

なお、こちらは内容を頭の整理として、あえてシンプルに記載しているものとなります。

どの税制も、適用要件の「あらまし」だけで数ページ~場合によっては10ページ以上にまたがるようなものばかりですので、

詳細の適用要件は、中小企業庁や厚生労働省の資料で確認が必要です。

※令和元年5月現在の状況です。なお、全て中小企業者等を前提に考えています。

 

② 中小企業投資促進税制(所得税・法人税) 

  • 機械及び装置(1台160万円以上)、測定工具及び検査工具(1台120万円以上、1台30万以上かつ複数合計120万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)
  • 取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(※税額控除は、個人事業主、資本金3,000万円以下法人が対象)の選択適用
  • ただ、医療機器が含まれる「器具備品」が対象でないことから、クリニックでの適用は少ないかもしれませんね。
  • 出所:中小企業庁HP「投資促進税制」

 

② 中小企業経営強化税制(所得税・法人税) 

  • 機械装置(1台又は1基160万円以上)、工具及び器具備品(30万円以上)建物附属設備(60万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)
  • 生産性が旧モデル平均1%以上向上 など
  • ただし、幾つか対象外が定められているため、クリニックでの適用は、実質的に「電子カルテのみ」という形になると思います。
  • ※ 器具備品のうち医療機器:医療保健業を行う事業者が取得又は製作をするものを除く
  • ※ 建物付属設備:医療保健業を行う事業者が取得又は建設をするものを除く
  • 即時償却又は10%(資本金3000万円超1億円以下の場合は7%)の税額控除
  • そして、最大の注意点。取得にあたって、工業会の証明書の取得、「経営強化計画」の作成・認可が必要(基本的には取得前)。
  • ※ 詳細は、こちらのブログにも記載しました。電子カルテの取得は年明けのほうがよいかも:「経営強化税制」
  • 出所:中小企業庁HP「経営強化法による支援」
  • 出所:国税庁HP「中小企業経営強化税制」

 

③ 中小企業等経営強化法による固定資産税の特例(固定資産税)

  • 平成31年3月末をもって終了となりましたので、ざっくり。
  • 対象は、ざっくりいうと②からソフトウェアを除いたもの、となります(「固定資産税」の特例、なので)
  • ②にあるような、「医療保健業が・・・」という除外規定はないので、クリニックでも適用が可能でした。
  • ただし、都道府県ごとに業種が限定されていて、東京都は医業が対象外(つまり、東京都のクリニックは適用ができませんでした)。

 

④ 生産性向上特別措置法による固定資産税の特例(固定資産税)

  • 機械装置(1台又は1基160万円以上)、工具及び器具備品(30万円以上)建物附属設備(60万円以上)
  • 生産性が旧モデル平均1%以上向上 など
  • ただし、医療法人は適用対象外、正確に言うと、市区町村の計画認定の対象外となります(中小企業等経営強化法第2条第1項に規定する中小企業者に該当しないため。中小企業庁にも電話確認済)。
  • 固定資産税の課税標準が3年間にわたってゼロ~2分の1の間で市町村が定めた割合に軽減
  • そして、こちらも②・③と同様に、取得にあたって、「先端設備等導入計画」の作成・市区町村の認定が必要(基本的には取得前)。
  • 出所:中小企業庁「生産性向上特別措置法による支援」

 

⑤ 商業・サービス業・農林水産業活性化税制(※ 医業は対象外、介護は対象業種)

  • こちらは、医業が対象外、つまりクリニックでは適用がありませんので、割愛します。

 

・・・ということで、結構長くなってしまいましたので、後半の「厚生労働省」所管の税制については、次の記事で。

「ざっくりとした箇条書き」にもかかわらず、前半だけでも、結構ボリューミーになってしまいました。

やっぱり税制って・・・too complicated…

 

ただ、院長先生のお立場から考えると、ただ1つ!ですね。

 

医療機器や器具備品を購入するときは、購入しようかなー、と思うタイミングで、早めに税理士にお知らせください笑。

 

なお、後半の「厚生労働省」所管の税制は、こちらの記事をご覧ください。

クリニックの設備投資減税②:厚生労働省所管の税制

 

 

【ひとりごと】

いただきもののカステラ。

ザラメの「カリカリッ」、と

カステラの「しっとりふわふわ」、が絶妙のハーモニーでした。