医療・クリニックに強い税理士松浦薫のブログ
今月、
「開業に向けた税務・労務の基礎知識」
・ 費用の経費処理は、開業前から?開業後から?
・どういう費用を経費にできるの?経費処理する場合の注意点!
・開業資金を親から借りた場合の注意点は?
などなど。
セミナー後、個別に頂戴した質問のなかに、
「開業準備中なので、
というご質問がありました。よく頂くご質問です。
というのも、セミナーでもお話させて頂きましたが、
同じ収入を得られても、それが「給与」なのか「事業のご収入」
からなんですね。
どういうことかというと、
これから開業される先生は、
この勤務されている先生方のご収入は、
勤務先からの「給与」という形になるのですが、
「給与収入」から、「給与所得控除」をひいたもの=「給与所得」
で、この「給与所得控除」は、
「給与」で収入を得られている場合には、
そこには、「節税」、
(もちろんふるさと納税、などはありますが、それはまた別の話)
一方、「事業のご収入」はどうなるか、といいますと、
(開業された先生がたのご収入は、この「事業のご収入」
但し、保健所等で行う検診などの市区町村の保険事業等、一部は給与所得となるものがあります)
給与と違って、「事業収入から経費をひいたものが所得」
同じご収入でも経費の金額によって所得が変わってくるんですね。
つまり経費が多ければ多いほど、
ですので、せっかく開業されて、
ぜひ、
そして、おそらくご質問を頂いた先生も、
で、そのご質問の、
「開業準備中なので、
というご質問について、ですが、
少し前の「理事の副業にかかる税金は?」でも書きましたが、
その収入が「事業所得」の「事業」に該当するかどうか(
その「実態」
じゃあ、その「実態」って何で判断するか、
平成24年、と少し前の話になりますが、
どういう裁判かというと、
・ 麻酔科ドクターである先生が、
・ 複数の病院との間で、
・ その各病院からの収入を「事業所得」として申告したところ、
・ 税務当局から、その所得が「給与所得」として指摘された
という事例です。
結論からいうと、こちらの所得は「給与所得」
まず、前提として、「事業所得」と「給与所得」のそれぞれの要件は下記と理解されています。
①「事業所得」とは、
・ 自己の計算と危険において
・ 独立して反復継続して営まれる業務から生ずるもの
②「給与所得」とは、
・ 自己と計算と危険によらず、
・ 使用者の指揮命令、空間的・時間的拘束に服して提供した労務対価
③「事業所得」と「給与所得」のどちらに該当するのか
・ その経済活動で変動し得る収益及び費用が誰に帰属するか
・ 費用が収益を上回る場合のリスクを誰が負担するか
・ 経済活動が指揮命令、空間的・時間的拘束を受けておこわわれるかという点を
総合勘案して個別判断すべきである
そのうえで、今回のケースは、下記のような「実態」
・ ドクターの得る収入が定額であった
・ 各病院が麻酔業務の費用を負担していた
・ 手術に係る場所・予定時間等は他律的に決定されている
(つまり、収入の変動はなく、費用も自己が支出していないため、自己の危険と計算において、とは言い難いという理解)
加えて、
・ 納税者の勤務時間が各病院の派遣医出勤簿で管理されていた
(つまり、空間的・時間的拘束も受けていた、という理解)
ことから、今回のケースは、「給与所得」として判断されたという形になります。
このように、「アルバイトだから事業ではなく給与」という単純な判断ではないのですが、
判断の根拠となった上記の条件は、ほぼアルバイトされていているドクターの要件にあてはまるものだと思います。
そのため、
「開業準備中なので、
というご質問については、「通常、給与所得となるケースが多くなる」とお答えするようにしています。
そのうえで、収入やご勤務の実態などをお聞きして、個別に判断させていただきますね。
(ひとりごと)
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