税金・節税

クリニックの消費税対策①:税率引き上げに向けて準備すべきことは?

2019.03.31
税金・節税

医療・クリニックに強い税理士、開業ドクターの「伴走者」の松浦 薫です。

モットーは、「お客様が『一番永く、深く関わりたいと思う専門家』になること」

院長先生が理想とする、自分らしいクリニックを作って頂くために、頼りになる「伴走者」であることを目指してます。

※ちょっと(かなり!?)変わった詳しいプロフィールはこちら。10人中10人の院長先生に面白がっていただいています(涙)。

 

今週末、クリニックの開業を考えておられる先生方にむけて、セミナーという形でお話をさせて頂きます。

テーマは「開業に必要な税務・労務の基礎知識」

 

セミナーのコンテンツを準備するにあたって、

毎回、できる限り「旬」というか「タイムリー」なトピックを盛り込むようにしたいな~ということで、

準備をしているのですが、

 

今回でいうと、タイムリーなトピックは2つ。

ひとつは、4月1日からの「有給休暇取得の義務化」

そしてもうひとつは、少し先ですが10月1日からの「消費税引き上げ」、です。

 

消費税は、時期からすれば、まだまだ半年先、のことなのですが、

色んなことに準備期間が必要、だったり、金額的にも影響のある先生にはインパクトが大きい話なので、

まずは、

 

クリニックで考えておくべき・準備しておくべき論点は何か?

 

という視点で、論点だしをしてみました。

各論点の詳細は、また10月1日に向けて、いろいろとアップしていこうと思いますので、

まずは、論点のみ。

 

(前提)医療機関の消費税損税は
診療報酬見直しで補填

まず、前提として押さえておくべき項目。

消費税率の引き上げのたびに議論になる医療機関の「消費税損税」、またの名を「控除対象外消費税等」問題。

 

ご存知の先生も多いかもしれませんが、あえてシンプルに申し上げると

 

  • クリニックはじめ医療機関の収入の大半を占める「保険収入」は、消費税が非課税の売上
  • ただし、医療機器やリース、家賃などは消費税がかかる課税仕入れ
  • そのため、消費税率が引きあがると、収入は上がらない(非課税なので)のに、費用は増える

 

ということになってしまうため、その損分をどう補填するか、ということが毎回、議論されます。

私も、顧問先のクリニックや医療法人様に大きく影響のある話なので、

厚生労働省の分科会での議論など、折を見て確認するようにしています。

 

では、今回の税率引き上げに対する補填がどうなったかというと、

 

平成31年度の税制大綱にも記載がされましたが、

 

今回の税率引き上げは、前回の8%に引き続き、「診療報酬の見直し」により対応されることになりました。

既に発表されたとおり、2019年10月1日より診療報酬が改定となります(医科は+0.48%)。

 

前回引き上げ時の診療報酬見直しでは、

補填のばらつき(見直しによる補填が医療機関によってばらついてしまう)などが指摘されていたため、

今回は配点方法など、もう少し精緻化が図られるようで、厚生労働省での分科会の議論も進んでいるようです。

引き続き、注視していきたいと思います。

 

前提はこのくらいにして、検討すべき論点について。

論点その①:
キャッシュフロー、資金繰りへの
インパクトはどの程度発生するか

では、まず一つ目の論点。

前述のとおり、多くの医療機関様にとって、消費税の引き上げは、キャッシュフロー的にはマイナスのインパクトです。

 

そのため、

  • 費用にかかる消費税がどの程度増えてしまうのか
  • その結果キャッシュアウトがどの程度増えてしまうのか

 

を、予測する必要があります。

そして、キャッシュインについては、

前述のとおり、10月1日から診療報酬が改定となり、費用の消費税が増える分が補填される形となりますので、

  • 診療報酬改定による収入増のインパクトがどの程度あるのか

も予測していく形になります。

 

ただ、ここで注意点。ご案内のとおり、保険診療報酬の入金は2か月後、ですので、

キャッシュフロー的にいうと、キャッシュアウトが先に増えてキャッシュインは2か月遅れで増加、

という形でずれが発生してしまいますので、資金繰りなど、注意が必要です。

 

論点その②:
「控除対象外消費税等」
のインパクトは?

次に2つめの論点。

①のキャッシュフローと関連して、

  • クリニックとしてどの程度の「控除対象外消費税等」が発生してしまうのか

は把握しておく必要があります。

 

クリニックの「控除対象外消費税等」については、また別に記載しますが、

こちらもシンプルに申し上げると、

 

消費税は、本来、

売上に係る「預かった消費税」から、仕入れや費用に係る「支払った消費税」を引いた、残りを納税、

するものなのですが、

 

課税売上割合が低いことによって、

医薬品・消耗品・設備投資等に係る仮払消費税のうち、控除することができない部分がでてきてしまいます。

それが「控除対象外消費税等」です。

こちらは所得税や法人税等を計算するにあたって、費用化できるものと、一旦資産に挙げて費用化していかなければならないもの、に分かれたりなんだりかんだり、、、で、

つまりは、

クリニックのキャッシュフローや資金繰りに一程度のインパクトが発生してくる

ものなのです。そのため、現状の数値をもとに、こちらも検討が必要。

 

・・・とここまで書きましたが、長くなってしまったので、

続きはまた別の投稿にしたいと思います。

今週末のセミナーでは、消費税でいうと、上記の論点に加えて、

 

論点その③:高額な医療機器などをいつ取得するか?

論点その④:軽減税率対象の仕入れはないか?

論点その⑤:自由診療の価格設定をどうするか?

 

といったお話をさせて頂く予定です。

準備は大変ですが、「これから開業」という先生がたにお目にかかれる貴重な機会。楽しみです。

 

【ひとりごと】

セミナーの準備もありましたが、

それ以上に、日々の仕事が全く回らず・・・

今週末は結局土日ともに「お仕事」でございました涙。

ということで、せめて終わりは、ビールかワインで乾杯します!